2008年2月11日、薩摩伝承館は開館致しました。白水館の創業者である父、下竹原弘志と、親子二代、60年にわたって収集してまいりました約3000点のコレクションを公開する施設として、永年心に温めてまいりました薩摩伝承館をここに開館できましたことを、まずは喜び、ここまでさまざまなかたちでご支援いただきました方々に心より感謝申しあげます。
この地が「鹿児島」と呼ばれるようになって137年になりますが、私は「薩摩」という名に、特別な想いを寄せてまいりました。
飛行機のない海の時代、南に開かれた日本の玄関としてさまざまな海外の文化を受け入れ、幕末、貿易の重要性をよく知り、いち早く外国と接触した薩摩。知性と先見性、積極性と指導力で、新しい時代を切り拓いた薩摩の先人たち。
この伝統ある薩摩の地の中でも、薩摩伝承館が建つこの指宿、そして南薩地方は、古から海外の文化を受け止めてきた、世界に向けて開かれた窓そのものでした。
薩摩には伝えたい歴史があり、伝えたい心があります。この輝く薩摩の光を、日本という国のもつ美しさとともに語り継ぎ、世界に伝えたい。これが、私が永年心の中に温め、薩摩伝承館にかけてきた想いです。
薩摩伝承館を舞台に、多くの方々が歴史との出会い、優れた美術品との出会い、そして人との出会いを楽しみ、歴史と伝統を語り継ぐ場となりますことを心より願っております。また、日本の伝統美と薩摩の心を表現したこの薩摩伝承館という建物の中で、そこに息づく「光」「水」「音」「香」そして「風」を、五感で感じてお帰りいただければ幸いです。
館主 下竹原和尚